【イベントレポート】アフターコロナのライフスタイル・働き方とは? – 多拠点居住で働くってぶっちゃけどうなん?
2020年初めから今日まで、新型コロナウイルス感染症の拡大により、テレワークやワーケーションなどにより、働き方や働く場所が劇的に変化した2年間でした。
働き方が多様化したことにより、家族との時間やプライベートの時間が充実するなど、様々な恩恵が得られましたが、一方で、従来のようにオフラインで顔を合わせる働き方の重要さも改めて見直されています。
今回は、「ライフスタイル」「移動」「働き方」の3つの観点から、この2年間でどのような変化があったのか、そして、これからどのような世の中になっていくのか、3名の登壇者によるトークセッションイベントを開催いたしました。
登壇者紹介
株式会社JR西日本イノベーションズ リーダー 細川 美春 氏
株式会社KabuK Style Alliance manager 舘野 和子 氏
株式会社MJE 代表取締役 大知 昌幸
多様化する暮らし方、働き方
株式会社KabuK Style 舘野 氏
この2年間は、想像以上に価値観の変化、多様化が進んだ2年間といえます。コロナウィルスのパンデミックにより、デジタル化の進展に伴いリモートワークが普及し人々の生活様式が変化しました。
デジタルノマドなど多拠点で暮らす人口が世界的にも広がりを見せていると言われていますが、目下2〜3年の話ではなく、2016年のデータでは、”2035年に90億人まで人口が増加するといわれる中で(Population Pyramid, 2105)、60億人の労働人口のうち、50%が企業に所属せずに働き、そのうち10億人はリモートワーカーとして働くだろうとされている” (出典:https://levels.io/future-of-digital-nomads/) ともあり、コロナにより、新たなライフスタイルや多拠点居住への変動が“起きた”のではなく、“加速した”ともいえるでしょう。
現在の、HafH*を利用している会員の皆様の事例を見ると、主に4つの「新しい旅のスタイル」のタイプに分けることができます。それぞれのライフスタイルやライフステージに合わせ、多様な使い方が見て取れます。
※HafH|株式会社KabuK Styleが提供するサブスクリプション式の宿泊サービス
タイプ① ふらっと気分転換に
基本は自宅で働いているが、気分転換を目的にコワーキングスペースや宿泊施設などで働いているタイプ
タイプ② がっつり仕事集中
自宅では集中できないため、都内に自宅を持っているものの、仕事はビジネスホテルなどで働いているタイプ
タイプ③ 多様な価値観とのつながり
自分以外の様々な価値観に触れるため、様々な場所を転々として働いているタイプ
タイプ④ デジタルノマド
場所を選ばずに働けるため、リゾート地など、自分のライフスタイルに合った場所を転々としながら働いているタイプ
また、参考までに「今後どのように働きたいか」というグローバル規模の調査データによると、約6割の人が「ハイブリッド型の働き方」を実践しており、そして、約7割が「ハイブリット型の働き方を希望」と答えた(参照元:https://futureforum.com/pulse-survey/)、というデータも出ており、働き方も、オフラインでなくてはならない、または、オンラインでなくてはならない、という二分した価値観ではなく、それぞれの良さを理解した上で、個人や組織にあった多様化した価値観に進化しているようです。
場所にとらわれない変則的な移動傾向
株式会社KabuK Style 舘野 氏
HafHは、JR西日本グループと共に、特定区間の新幹線・特急券が約40%引きとなる「HafH特ワーケーション」実証実験を2021年4月〜11月に実施しました。
実証実験を通じて、都市部と地方との両方に拠点を持って移動をしている方や、地方に拠点を持ち、様々な地方を行き来している方など、多拠点居住と移動に様々な形が見られました。
今回は、実証実験に参加した3名の1カ月間のユーザーの動きをご紹介します。
事例① 複数個所を長めに滞在し訪ね歩く
福岡に拠点を持ちつつも、広島や岡山、鳥取、新大阪など複数の拠点を、3日間〜1週間以上滞在し移動するパターン
事例② 2拠点居住
新大阪と岡山の両方に拠点を持ち、2拠点を行き来しているパターン
事例③ 地方から都心までホッピングしながら回遊する
ベースとなる拠点は富山県にありながら、富山、東京、名古屋、大阪、金沢などを回遊するように2〜3日滞在し移動するパターン
また、実証実験と連動して石川県のHafH提携施設にご協力をいただきイベントを開催した際には、特急にかかるコストを抑えられた分、約1週間近く滞在しているという事例も一定数見られ、また現地情報を発信する専用のSNSを通じレアな情報取得や交流をした会員が、延泊をし石川県の複数エリアへ足を伸ばす事例も発生しました。
イベント期間のみならず、終了後も、イベント参加者の積極的なSNS発信により、石川県への滞在事例が増え、多拠点居住という観点に縛られない様々なムーブメントが発生しました。
株式会社MJE 大知
様々に価値観が変化している中で、多拠点での生活に憧れて「実践したい」と感じる人は多いと思うのですが、実際に実践している人はまだまだ少ないのが実情だと思います。
多拠点居住の実践において、どんなことがハードルになるのか、また、そのハードルを超えるにはどうすればいいのか、もしあれば教えていただきたいのですが。
株式会社KabuK Style 舘野 氏
働く環境やライフステージなど、環境によって大きく変わると思います。
実際に多拠点居住をしたいと考えているものの、様々な要因により気軽に住まいを離れられない方はいらっしゃると思います。
今回、実証実験を通じ一部の参加者より、これまで多拠点生活は、「絵に描いた餅だ」と考えていた方も、実証実験を通じてチャレンジができたことにより、「憧れからライフスタイルになった」という声もいただいています。
また、HafHでは宿泊施設により同行者●名まで可能といった、お子様も一緒に利用できる宿泊施設も増えており、一部の会員は週末または月の2日程度をお子様とご自宅以外の場所でワーケーションという形でもチャレンジしている方も一定数いらっしゃいます。
個々人により事情や背景は異なりご家族のご協力が必要な場合もあるのですが、もしチャレンジをしてみたい方は、まずはできる範囲で、一歩踏み出してみることが重要だと感じます。そこから得られた知見でさらに自分らしいライフスタイルを楽しんでいただければ幸いです。
コロナ渦における“移動”の変化
JR西日本イノベーションズ 細川 氏
コロナ拡大以前は、「仕事は対面で」がベースにあったため、オフィスへ出社すること(自宅とオフィスの間を往復するような生活)や、出張などの移動が当たり前でしたが、コロナ拡大により、移動におけるこれらのビジネス需要、加えて、観光重要が一気に減少しました。
そして、コロナによって、「対面でなくても仕事はできる」という考え方が世に広がりました。
しかし、コロナ禍においても定期券利用者などの需要は固く、一時期の利用者減少から、一定水準まで回復しました。ただやはり、回復しているとはいえ、100%の水準に戻すのは難しい現状もあります。
今後は、これまでの方法に戻すのではなく、KabuK Styleのような新しい取り組みをしている企業との連携や、多拠点居住のような新しい生活スタイルを始めている方への新たな提案などを通じ、これからの世の中に適応する方針で、サービスを創っていく必要があると考えています。
実際にJR西日本イノベーションズの社員の中にも、多拠点居住を実践していたり、準備を進めている社員も多くいるので、そのような事例からニーズを聞きながら、アップデートしていきたいと考えています。
また、KabuK Styleとの実証実験の中で、一つのエリアに何度も足を運び生活する事例も見られるようになりました。
このような人達に対して、働き方だけではなく、その土地特有のコンテンツや体験を提供し、西日本のファンを増やすことや、また、滞在先だけではなく、移動時間の働き方についても取り組む必要もあると考えています。
シェアオフィスを取り巻く市場の変化
株式会社MJE 大知
そもそも「シェアオフィス」という業態は歴史が浅く、まだまだ未成熟なマーケットです。5年くらい前まで、シェアオフィスといえばいわゆる「THE レンタルオフィス」のような、小さな個室のオフィスを貸し出すだけというイメージが持たれていました。そのイメージが変わった要因として、3つほどあげられます。
潮目① 政府による「起業家輩出の促進」と「働き方改革」
第二次安倍政権において、起業家の輩出を促進しようという方針が発表され、また、2016年9月頃に提唱され始めた「働き方改革」も発表されました。ただ、「働き方改革」が提唱され始めた当時は、労働時間の短縮に重きが置かれていましたが、少しずつ「働きがい」や「やりがい」に変化していったように思います。
潮目② シェアリングエコノミーの台頭
マクロ的な視点から見ると、「所有」という考え方から「共有」へ移行していた時期でもありました。そうした中で、シェアリングエコノミーの台頭も大きく影響したのでは、と考えています。
潮目③ WeWorkの日本進出
極めつけは、2018年2月頃のアメリカのシェアオフィス「WeWorK」が日本に進出したことです。これらにより、日本国内でのシェアオフィスの認知度が大きく上がりました。
コロナ拡大以前のシェアオフィスは、働く場所やリソースの共有と活用、ネットワーキングの観点や、コミュニケーションのプラットフォームとしての機能などを期待されて認知されていました。
そのため、スタートアップや起業家、フリーランスなど、自由な働き方ができる層を中心とした市場とされており、一般的な企業、大企業などの利用はまだ価値観として少ない状況でした。
コロナ拡大以降になると、接触や密集を避ける動きに伴い、テレワーク、リモートワークの導入が一気に進められていきました。
テレワークの場として従業員の自宅が選ばれる一方で、これまでシェアオフィスをあまり利用していなかった一般企業や大企業などが、BCP対策の一環として、オフィスを分散させるためにシェアオフィスを選択する、という動きも多く見られるようになりました。
今後は、コロナ拡大以前の、ネットワーキングやコミュニケーションのプラットフォームとしての観点や、BCP対策などの観点など、両方の観点から、さらにシェアオフィスの浸透が進んでいくと考えています。
まとめ|コロナ以降(After corona)の世界の予測
ライフスタイルはさらに細分化、多様化が進む
株式会社KabuK Style 舘野 氏
多拠点生活とは、目的ではなく手段であり、自分らしい豊かな生き方ができる場所探しであると考えています。そして一般的にもライフスタイルはこれからさらに細分化、多様化されていくと考えます。
個々人が、自分自身がライフスタイルを選んでいくという意思を持ち、行動をすることで、可能性が広がり一人ひとりの人生はより豊かになっていくと私たちは考えています。
HafHでは、そうした方々に対して寄り添える存在であれるよう、一人ひとりが新しいライフスタイルを選択する際に、充実した選択肢を提供する総合ライフスタイルプラットフォームを目指し、宿泊のみならず移動や他サービスの拡大を進めていきます。
一人ひとりに合わせた細やかな暮らし方・生き方が増えていく
JR西日本イノベーションズ 細川 氏
これからは一つの価値観や考え方に明確に分かれていくのではなく、一人ひとりに合わせた細やかな暮らし方や働き方が発生するでしょう。
JR西日本グループでは、典型的なマスのグループに対してではなく、それぞれのお客様に寄り添うサービスや、シームレスに利用できるサービスなど、自分たちのライフスタイルに合わせて便利に利用できるサービスを創っていきたいと考えています。
併せて、今までにない鉄道の使われ方も考えていきたいです。
選択を正しく認められる、異端扱いのない世界
株式会社MJE 大知
「オフィスには出社するべき」など、日本は固定観念が強い国民性でしたが、現在はそれも変化してきており、生活や働き方がどんどん多様化しています。
そうした中で、自分自身が選択した生活の仕方や働き方が正しく認められる、異端扱いされないことが本当の多様化だと考えています。
そうした世界が徐々に実現されてきていると思うので、MJEでは、シェアオフィスを通じて、働き方や働く場所の多様化を促進する役割を担っていきたいです。
主催者情報
株式会社MJE / 南海電気鉄道株式会社